短歌鑑賞2

伊藤 京子 (いとう きょうこ)

人物

 1958年〜 (昭和33年〜 )。愛知県生まれ。

 結社「中部短歌」。 「はなむぐり」 「さみどりみどり」。

鑑賞

アアーンと言へばぽつかり口開きし吾子のまなこに目薬たらす

 あどけない幼子のかわいらしさが描き出された歌です。「目薬たらす」のは母親である詠み手です。幼子は、詠み手である「母」にすっかり身を任せています。その純朴さが、「ぽつかり」というオノマトペと「口開きし」という行動描写によく表れています。

 「アアーン」と言ったのは詠み手でしょうが、子どもに目薬をさす時に、母親が「アアーン」などと言うでしょうか。「アアーン」と言われれば、子どもが口を開けるのは目に見えています。この母は子どもがとる行動を予想した上で「アアーン」と言い、目薬をさしているのです。子どもとの関わりを遊び心をもって楽しんでいる母親の姿が思い浮かんできます。

 ほのぼのとした親子の関わりを示す一シーンが、歌として定着させられています。

2008年

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