短歌鑑賞2

大崎 瀬都 (おおさき せつ)

人物

 1957年〜 (昭和32年〜 )。高知県生まれ。

 結社「ヤママユ」。 「海に向かへば」 「朱い実」

鑑賞

誰も彼も追ひ詰められてゐる職場話しかけても聞こえぬほどに

 チャップリンが「モダンタイムス」において、労働者が機械の部品のように扱われる状況を描いたのは一九三六年のこと。現在、電子機器等の導入により労働疎外の状況も様相を変えていることでしょう。その上に、「合理化」や管理の強化が職場の雰囲気をギシギシしたものにしているのに違いありません。

 「追ひ詰められてゐる」と言う時、その原因がどこにあるのか、現場にいるとなかなか見えてこないものです。しかし確実に「追ひ詰められてゐる」と感じないわけにはゆきません。

 この歌では、「話しかけても」とあることから、情報を交換しながら進められるべき仕事なのだろうと推測されます。本来なら「共働」であるべきなのに、一人一人が自分の持ち分の仕事に精一杯である状態、そのことを悲しみ、その状態に疑問を感じているのがこの歌でしょう。

 働く者が追い詰められて個々ばらばらにされている職場は、人間らしい職場とは言えません。

2008年

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