短歌鑑賞1

塚本 邦雄 (つかもと くにお)

人物

 1922年〜2006年(大正11年〜平成18年)。滋賀県に生まれる。

 昭和21年(1946)「日本歌人」に入会。昭和61年(1986)に「玲瓏」創刊。

 歌集に『水葬物語』(昭27)、『装飾楽句』(昭31)、『日本人霊歌』(昭33)、などがある。

鑑賞

日本脱出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも

※『日本人霊歌』(昭33)所収。

飼育係りの慨嘆

 「日本脱出したし」と歌の趣旨が端的に示されています。

 皇帝ペンギンは本来寒い地域に棲むものですから、日本のような温帯から脱出したいのは当然と言えるでしょう。その飼育係りも脱出したいというのは、自分の状況やそれをもたらしている日本というものがよほど嫌なのでしょう。日本に対する嫌悪、憤懣がうたわれています。それでも脱出できないと考えれば、日本に対する愁嘆の思いとも言えます。

 なぜそんな思いにかられるのかと言えば、わかりません。それぞれが「日本」というものをとらえ直すしかないのでしょう。

 この歌は、短歌史の流れの中で取り沙汰されたものだと想像されます。くわしくはわかりません。教科書に採られた際には、せいぜい破格の一例という位置づけになるのではないでしょうか。

2012年

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